にしがひがしに（８）（R18)

「んっ、ん、ゃ、いやや、木戸っ、イきたっ、んっ」

　達する事も許されず、現(うつつ)を諦めさせてももらえない。なのに太一を昂ぶらせ、責め立てる木戸の指だけは休まる事がない。太一は首を何度も横に振り、涙を流して木戸に精を吐きたいと懇願した。

「はぁっ、ぁっ、ん、ん、……んんっ」

　ほんの少しの刺激で身体が跳ねる。ビクビク跳ねる身体を宥めるように、木戸が太一の額に自らの額を当てた。

「太一、俺見ろって」
「ん、んっ、は、ぁ」

　呼吸の掛かる至近距離で言われ、涙で歪む視界に木戸を捕える。

「俺の事、好きやろ？」
「んっ、ん、ぅん、ん」
「俺も、好きやで太一」

　木戸が、優しく唇を塞ぐ。落とされた言葉が何かの呪文のように、太一の心までドロドロに溶かしてゆく。

「ぁっ、んっ、んっふ、ん、っは、あっ」

　大きな波に飲まれる。こんな感覚、一体どこからやって来るんだろう。朦朧とした意識の隅で太一は思う。血が逆流したのか、それとも吐けない精が逆流したのか。視界は白く、そして赤い。駄目押しのように強く中を抉られた。二度、三度。

「あっ、ぁっ、あぁっ、ああっ！」

　太一は身体中を硬直させ、達する事のできないまま達した。達したはずなのに、身体が帯電しているかのようにいつまでも体内に官能が燻る。気が違ってしまいそうな程に何度も、またあの波が来るんだろう。そんな確信めいた予感を胸に、現の境界線ギリギリのところで意識を残した太一が涙で濡れた顔を木戸に向けた。

「太一、イった？」
「ん……、っふ……」
「可愛いな、太一」
「あっ……っ！」

　木戸がまた、中を抉った。また、波に攫（さら）われる。押し寄せて、引かない波。

「んっふ、っあ、あああっ」

　――もうあかん……お前かて知ってるやろ……？　木戸……。

「好き……」

　身体の中に官能を宿したまま、太一は現から意識を切り離した。





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『トモダチ、卒業します。』（R18)



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