すべては愛のせいだろ？（15）

　開店祝いなのか、たくさんの荷物を運び込み終え、淳汰に少しの色目を向けるマスターであるその男から受け取りのサインをもらいながらそんなお決まりの会話を交わした。その艶を含んだ視線には気付かなかったふりをして、淳汰は帽子の鍔を指先で摘んで軽く会釈した。

　店を出て、小さな溜め息とともに顔に張り付いた笑顔を解く。細い路地にある店のため、大通りに路駐した車から店まで、荷物を乗せて運んだ台車を押してトラックまで歩いた。アスファルトの上を転がる車輪のガラガラと周囲に響く音も、活気づき始めた繁華街の雑踏に紛れてゆく。

　再び訪れた土曜日。聡士との行為から一週間が過ぎた。

　ここのところ、どうも調子が出ない。

　体調が悪いわけではない。聡士との行為の直後でさえ、多少の違和感と痛みを覚えながらも徒歩で帰宅する事ができた。

　要するに、メンタル面。

　トラックに乗り込み、今の店の男の事を思い返してみる。シンプルだが上質の洋服を纏う彼は、飾らない雰囲気だがどこかこだわりを感じる店の雰囲気そのものだった。夢を叶え、希望を持つ男の表情が美しかった。加えて、淳汰に向けられた僅かに意味を含ませた視線。

　――いつもの俺なら速攻口説いてたな。

　その手順まで容易に想像できる。さっき荷物を届けた時点でまず店を褒める。何度か店に通い、一人で行ってもあの男が相手をしてくれるようになる。そして、店を閉めたあと、二人で飲みに行くまでの仲になる。店を開くまでの事、店の事、料理や酒の事。こだわりを持つ者はその話を聞いてくれる相手が好きだ。普段接客で人の話を聞く側にあるなら尚更だろう。彼は間違いなく男を知ってる。多分すぐに落ちるだろう。何度かデートを重ねて、いやもしかしたら一度のデートで充分かも知れない。そのままホテルにでも行って――。

「いや、やんねーけど」

　ここまで詳細にシュミレートできながら、どうもその気にならない。

　苦笑して、帽子を脱ぐ。脇に置いて、淳汰は車のエンジンをかけた。





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↓二人がちょろっと出てくる話はコチラ
中野聡士→『にしがひがしに』
山井淳汰→『24/7(twentyfour-seven)』


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これで一応仕事してるっぽいとこ、出せたでしょうかwwwwww
個人的には西ｂ運輸の青とか、イイナァ(*´∀｀)とか思いつつ