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村椿・三垣(完結)(高校生年下攻?)

BL好きが書いた自作小説を短編・シリーズでぼちぼちアップしています。年下攻率高し。 18禁。
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「おいツバキっ! 待てっ!」

 三垣が店を出てそう叫んだと同時に、村椿を乗せたエレベーターの扉が閉まった。合コン会場はビルの五階。動き出したエレベーターの位置を示すランプが次第に下へと降りてゆく。ちっと舌打ちをして三垣はエレベーター横の階段を駆け下りた。


 志水が明るく立ち上がって何やら妙なパフォーマンスをしている。

 ――そういえばあれ、以前俺が教えた芸だったっけか。

 そんなことを考えながら三垣は他人事のように肘をつき楽しげな合コン風景を眺める。いったい何時の間に合コンがこんなにつまらないものに感じるようになってしまったのか。

「綾峰高校新聞部でーっす。おねーさまがたに向かって右から部長の三垣、俺、志水、隣が高見、最後が我が部のホープ、ツバキちゃんコト村椿一(はじめ)クンでーす」

 化粧の匂いがここまで届いてきそうな派手な四人の女性を前に、副部長の志水が明るく三垣たち四人を紹介した。

 ――っておい、なんでツバキがここにいんだよっ?!


「あの、部長……?」

 きゅいんと音を立て立ち上がるパソコンの静かな唸り声にすらかき消されそうな程小さな声で、村椿が遠慮がちに言った。

「休み明けたら、僕に、号外でなく、正式広報の一欄を、書かせてもらえませんか……?」


 人気のない校舎。ジワジワと鳴く蝉の声と、カキーン、と定期的に鳴る野球部のノックの音が遠くから聞こえてくる。

 三垣は一人、新聞部の部室にあるパソコン前の椅子にぼんやり腰掛けていた。夏休みに入ったのに、特に何の用も無くても部室に顔を出してしまう自分を忌々しく思い、誰もいないなら一服でもするか、と胸に忍ばせた煙草に手をかけた。その時、がちゃりと部室の扉が開く音がして、三垣はその手を止めた。

「これ、本当にお前が書いたのか?」

 差し出されたレポート用紙に目を通した三垣は目を丸くした。

 生徒会長の恋の行方。彼の想い人が二つも年下のダークホースにかっさらわれた様子をすっぱ抜いた大スクープ記事だった。

「あの、三垣部長……」

 村椿が目元を潤ませて三垣の横に立っている。

「あんだ?」

 三垣は『俺は怒ってるんだオーラ』を精一杯出して村椿の方を向いた。

「あの、迷惑かけて、本当に、すみません。僕、でも、三垣部長のような記事、書けるようになりたいんです。だから、頑張りますから……」

 ここまで言ってとうとう村椿の目から一筋の涙がこぼれた。

 どうしてこんなにトロ臭い奴が入部してきたんだ、と三垣はやっぱり思う。コピーを取りに行かせれば、必要部数の倍の失敗コピーを携えて半泣きで戻ってくる。スクープ狙いの尾行では、気付いたら姿を消し、どこへ行ったかと辺りを探せばカツ上げされている。まったくそんな要領の悪さでは、この伝統ある新聞部の次世代を担っていけない。

「新入部員にコピー代だけで生徒会に随分貢献してくれている子がいるみたいだね」

 先日インタビューで面会した生徒会長に嫌味を言われる始末。経費のことを考えると頭が痛い。


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