「どうも」
慎治は立ち上がり、野田に軽く会釈をした。すると野田も釣られたようにどうも、と小さく頭を下げ、それから横にいたウェイターにホット一つ、と注文した。
二人向かい合ってソファに座ると、暫し沈黙が流れた。慎治から掛ける言葉は何もない。そしてまた慎治は野田の言葉を全て聞き入れ、自分からは何も語るまいと、そう決意していた。
慎治は立ち上がり、野田に軽く会釈をした。すると野田も釣られたようにどうも、と小さく頭を下げ、それから横にいたウェイターにホット一つ、と注文した。
二人向かい合ってソファに座ると、暫し沈黙が流れた。慎治から掛ける言葉は何もない。そしてまた慎治は野田の言葉を全て聞き入れ、自分からは何も語るまいと、そう決意していた。
じっと野田を見詰める慎治に対して、野田は少し俯いてテーブルを見詰め、言葉を躊躇しているのか何度も唇を湿らせている。
「あの」
いたたまれずに、沈黙を破ったのは慎治だった。
「はい」
野田は驚いたように顔を上げた。
「話って、なんでしょう」
――どんなに時間をかけても同じ事を言われるのなら、いっそ早く済ませて欲しい。
野田をじっと見る。開き直ったかのような慎治の態度が野田には不遜と映ったのか、野田が一瞬、嫌な物を見るような目で慎治を見た。
「念のためににお聞きしますが」
「はい」
「巽さんは歩と……?」
その先の言葉は憚られたのか、野田が言葉を濁した。
「……付き合ってます」
今の問いに、最後の望みを託していたのだろう。野田が絶望したような表現を見せた。
「結論から言いますと、今後歩に会うのは控えて頂きたいんです」
思った以上にストレートに切り出された。緊張で心拍数が上がる。きっとそれは野田も同じだろうと、己を鼓舞し、拳を握る。
「歩……君の方に話は?」
「していません。そちらからもう会わないよう言ってもらえれば、あとはこちらでフォローするつもりです」
――俺一人を悪者にしようとしてるのか。それで俺が納得するとでも思ってるんだろうか。
「理由は?」
「理由……歩のため、です。最初は歩に彼女ができたんだろうと思ってました。帰りが遅い日が続いたので一体どんな相手なんだと調べて、驚きました。こんな……年上の、しかも同性だったなんて」
――そりゃ驚いただろうな。相手が女でも十も年上なら普通引くだろうし。テクにモノ言わせて歩をホネヌキにしたとでも思ってるんだろう。ああ、歩が俺にヤられてると思ってるんだ。歩はタチっすよ。オニーサン、歩はずっと、あんたをヤりたいと思ってた。
言ってやろうか。
一瞬の衝動。歩が今まで必死に守ってきたものを滅茶苦茶にして、壊してやる。
――歩。
野田の表情に、歩の面影が重なる。目の前のこの男は、歩の一部なんだと思ってはっとする。
――言わねーよ。言うわけねーだろ。
いつの間にか鋭さを湛えていた己の眼差しの光を、一度ゆっくり瞬きする事でそっと消した。
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いたたまれずに、沈黙を破ったのは慎治だった。
「はい」
野田は驚いたように顔を上げた。
「話って、なんでしょう」
――どんなに時間をかけても同じ事を言われるのなら、いっそ早く済ませて欲しい。
野田をじっと見る。開き直ったかのような慎治の態度が野田には不遜と映ったのか、野田が一瞬、嫌な物を見るような目で慎治を見た。
「念のためににお聞きしますが」
「はい」
「巽さんは歩と……?」
その先の言葉は憚られたのか、野田が言葉を濁した。
「……付き合ってます」
今の問いに、最後の望みを託していたのだろう。野田が絶望したような表現を見せた。
「結論から言いますと、今後歩に会うのは控えて頂きたいんです」
思った以上にストレートに切り出された。緊張で心拍数が上がる。きっとそれは野田も同じだろうと、己を鼓舞し、拳を握る。
「歩……君の方に話は?」
「していません。そちらからもう会わないよう言ってもらえれば、あとはこちらでフォローするつもりです」
――俺一人を悪者にしようとしてるのか。それで俺が納得するとでも思ってるんだろうか。
「理由は?」
「理由……歩のため、です。最初は歩に彼女ができたんだろうと思ってました。帰りが遅い日が続いたので一体どんな相手なんだと調べて、驚きました。こんな……年上の、しかも同性だったなんて」
――そりゃ驚いただろうな。相手が女でも十も年上なら普通引くだろうし。テクにモノ言わせて歩をホネヌキにしたとでも思ってるんだろう。ああ、歩が俺にヤられてると思ってるんだ。歩はタチっすよ。オニーサン、歩はずっと、あんたをヤりたいと思ってた。
言ってやろうか。
一瞬の衝動。歩が今まで必死に守ってきたものを滅茶苦茶にして、壊してやる。
――歩。
野田の表情に、歩の面影が重なる。目の前のこの男は、歩の一部なんだと思ってはっとする。
――言わねーよ。言うわけねーだろ。
いつの間にか鋭さを湛えていた己の眼差しの光を、一度ゆっくり瞬きする事でそっと消した。
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