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主よ、人の望みの喜びよ(7)

BL好きが書いた自作小説を短編・シリーズでぼちぼちアップしています。年下攻率高し。 18禁。
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「酷い顔ね。汚いわぁ」

 カウンター越しにマスターが慎治を覗き込む。この季節にランニングシャツ姿の彼の、無駄に鍛えられた腕の筋肉が暑苦しささえ感じさせる。


「うっせーよ。汚ねぇってなんだよ。早くビールよこせって」

 はいはい、と溜息を吐きながらビール瓶とグラスを慎治の前に差し出す。すぐさま奪うように瓶を手に取り、グラスに注ぐ。

「なんて顔してるのよ。寝てないの?」
「寝てるよ。昨日までは。寝不足には明日からなる予定」

 もうそんなに酷い顔になってるのか、と頬を撫でてみる。マスターが勝手に自分のグラスに今慎治に出した瓶からビールを注いでいる。いつもの事だが、怒る気力もない。慎治は彼を睨み付けるにとどめた。

「どうしたのよ。ココの所珍しく満たされてたみたいなのに。ケンカでもした? フラれた?」
「フラれてねーよ。俺から……」
「振ったの? 慎チンのくせにっ?!」
「いちいちうっせーよ」

 マスターのいつもの調子にそれでもほんの少し癒される。言葉とは裏腹に、彼に笑ってみせた。うまく、笑えてるだろうか。その笑みにマスターがいよいよ心配そうに覗き込んだ。

「ホントに何があったの?」
「あー……。相手の身内に俺と付き合ってんのがバレた」
「で? 修羅場?」
「いやまぁ修羅場って程にはなってねんだけど……身内が出張ってきて別れろって」
「そう……。よくある話ね」

 よくある話。そう。笑ってしまうくらいに。

 グラスを呷って、ビールを再び注ぐと、グラスの半分も満たさずに瓶が空になった。

「おっさん俺のビール飲み過ぎだろ。まーいーやもー次ジン。ロック。ライム。奢れよ」
「慎チン」
「あんだよ」
「今日みたいな日は酔わないわよ。帰って早く寝なさい」
「客追い返すの」
「そうよ。明日も仕事でしょ」

 マスターはそっと、慎治の頭を撫でた。



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コメント
せつないっ!
慎治さん、そんな~
せつない、せつな過ぎますっ!
でもこういうお話も好きだなー。
お兄さんに何も言わない慎治さん、優しい♪
歩君には頑張って、そんな慎治さんを掴まえてて欲しいvv
2008/04/25(金) 12:09 | URL | 蛍 #-[ 編集]
あ(・∀・)り(・∀・)が(・∀・)と(・∀・)う!ございます!
>蛍サン

いつかそのうち慎チンを泣かせたい、な勢いで
進めたいと思ってはいますが……さてまだ分かりませんorz
慎治を優しいとか言ってもらえてもうそれだけで
ウレシ杉て昇天しそうです(´Д⊂ヽ
ここはやっぱり歩ががんがって大人になれるよう
そしてちゃんと書ききれるよう
がんがります!(私が
いつもありがとうございマス!
2008/04/26(土) 02:33 | URL | ベラ #mQop/nM.[ 編集]
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