歩は兄夫婦宅のリビングに向かった。兄嫁の優子はキッチンに向かい夕食の支度をし、兄の進はソファに座り、一歳6ヶ月になったばかりの息子の学(サトル)を膝に乗せてあやしている。
そこには日曜の夕暮れ時の、幸せな光景が広がっていた。
部屋に入った歩に気付いた学が進の膝から滑るように下りて、あーたん、と言いながらたどたどしい足取りで歩の元に駆け寄って来る。歩は柔らかい笑みを浮かべ、優しく学を抱き上げた。学の髪の匂いを嗅ぐと、甘く、どこか懐かしいような、愛しい匂いが鼻腔を満たした。
そこには日曜の夕暮れ時の、幸せな光景が広がっていた。
部屋に入った歩に気付いた学が進の膝から滑るように下りて、あーたん、と言いながらたどたどしい足取りで歩の元に駆け寄って来る。歩は柔らかい笑みを浮かべ、優しく学を抱き上げた。学の髪の匂いを嗅ぐと、甘く、どこか懐かしいような、愛しい匂いが鼻腔を満たした。
「兄貴」
学を抱いたままソファに腰を下ろす。学はその身体を反らせて歩の腕を抜け、パパ、と言いながらまた進の元へと戻って行った。自分でソファによじ登ろうとする学を愛しそうに見詰め、進が彼を引っ張り上げて自分の隣に座らせてやる。
「ちょっと、話」
「どうした? 誕生日プレゼントならもう渡しただろ?」
冗談めかして言葉を返し、進が歩に視線を向ける。兄は今だに弟の誕生日に贈り物を欠かさない。その内容は様々だったが、歩がアルバイトで得た収入のほぼを全てを学費と貯蓄に回し始めてからは、それすら始末しようとする歩に衣服を贈った。
今朝も夜シフトでの仕事明け数時間の睡眠で起き出してきた歩に、進は妻と選んできたという洋服を、待ち構えていたかのように歩に着せ、似合う、と歩以上に嬉しそうにしていた。今年は二十歳という事もあり、いつも以上に上質で、数も多くそれは小物類にまで至った。
話はここで良いのか、と小さく問う進に、歩は黙って頷いた。深呼吸を一つ。歩は、真っ直ぐ兄を見た。
「――俺は、結婚とか子供とか、一生ねぇよ」
髪を引っ張ろうと戯れ付く学の手から逃れて、進が笑う。その笑みのまま、進は真意を計りかねた様子で小さく首を傾け歩を見た。
「歩?」
「俺はね兄貴」
進の言葉を遮るように、歩は言葉を続けた。
「ずっと兄貴の事が、好きだったんだよ」
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話はここで良いのか、と小さく問う進に、歩は黙って頷いた。深呼吸を一つ。歩は、真っ直ぐ兄を見た。
「――俺は、結婚とか子供とか、一生ねぇよ」
髪を引っ張ろうと戯れ付く学の手から逃れて、進が笑う。その笑みのまま、進は真意を計りかねた様子で小さく首を傾け歩を見た。
「歩?」
「俺はね兄貴」
進の言葉を遮るように、歩は言葉を続けた。
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