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主よ、人の望みの喜びよ(19)

BL好きが書いた自作小説を短編・シリーズでぼちぼちアップしています。年下攻率高し。 18禁。
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「歩……」

 進の膝の上に立って飛び跳ねる学を、進は慣れた手つきで抱え下ろし、ママどこ? と話し掛けた。少し周囲を見回して、遠くに母の後ろ姿を見つけた学が、ママ、と両腕を伸ばして台所へと向かう。学の背を見送って歩に視線を戻した進は、歩の言葉によって僅かに呼吸を乱し、小さく肩を上下させていた。

「それが絶対叶わないって事が分かった日、ヤケんなりそうだった俺を救ってくれた人がいたんだ」

 ――慎治さん。慎治さんが俺を見つけてくれたから。俺は今、ここにいる事ができてる。

「兄貴俺、行きたい所がある」

 向かい合うように座った正面から、真っ直ぐ兄を見詰める。混乱からか、視線を泳がせた後、やっと兄の視線が歩を捉えた。思えばこんな形で兄を見詰めたのは、何年ぶりだろう。やっと、身を焦がす訳でも、余りの切なさから煩しいと思う訳でもない、本来の意味で兄を兄として受け止められるようになった。

「俺と、俺の大切なものを身体張って守ってくれる人の所に。行って、できるなら今度は俺も、守りたい」
「歩……」
「慎治さんは、俺の命だ」

 きっぱりとした歩の言葉。進は何かを思い出すように遠くを見た。

「俺は……お前に必要な事は何か、大事な事は何か、いつもそれを一番に考えてきたつもりだ」
「うん、分かってる」
「それなのに俺は……」
「うん」

 俯く兄をじっと見た。

 ――分かってるよ、兄貴。大好きだ。世界で二番目に。

「……オヤジやオフクロには?」
「話すよ。まだ分かんねぇけど、そのうち」
「今から行くのか?」
「うん。もう少ししたら」
「そっか。もうお前が帰って来なくても、オフクロには俺からうまく言っといてやらなくてもイイ……んだろうな、きっと」
「……分かんねぇよ。帰ってくるかも知んねぇし」

 それでも歩が微かな笑みと共に小さく頷くと、兄は少し、寂しそうに笑った。






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コメント
切ないね・・・
泣きそうになってたけど、
どうやら大丈夫そうだ。(鼻の奥が痛い/笑)

もうすぐ完結かな?

続き、楽しみにしてます。
2008/05/23(金) 07:18 | URL | 伽羅 #ZJk3q2Y2[ 編集]
ありがとうございマスー!!
>伽羅さんv

少しご無沙汰しておりますいつもありがとうございマスッ!!
(・ё・)クサーて思われそうと毎日ハラドキしております(;´Д`)
はいーもう波乱はないですw
あとはひとエチーです!どやって持ち込みましょかwwww
よろしければ最後までお付き合いくだちぃv
2008/05/24(土) 00:42 | URL | ベラ #mQop/nM.[ 編集]
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