「慎治じゃん、久し振りー」
いつもの店。ビール傍らにカツ丼を食べる慎治にケイタという男が声を掛けた。ぱっと人目を引く派手な容姿の彼はジャズピアニストで、仕事柄か手入れされた美しい指と年齢不詳の若さを持ち合わせている。かなり以前の事だったが、過去戯れに身体を重ねた事のある彼の変わらない若さを、慎治は半ば感嘆にも似た気持ちで眺めた。確か彼は慎治より四つ年上だ。
いつもの店。ビール傍らにカツ丼を食べる慎治にケイタという男が声を掛けた。ぱっと人目を引く派手な容姿の彼はジャズピアニストで、仕事柄か手入れされた美しい指と年齢不詳の若さを持ち合わせている。かなり以前の事だったが、過去戯れに身体を重ねた事のある彼の変わらない若さを、慎治は半ば感嘆にも似た気持ちで眺めた。確か彼は慎治より四つ年上だ。
「久し振り。ケイタさんがここにいるって事は今ケイタさんオトコいねーんだ?」
「まーね。今日空いてんなら久々にどう? 慎治のご奉仕セックス、スゲー懐かしいんだけど」
相変わらずのビッチな軽さで慎治を誘うその口調に、慎治は苦笑した。
「ご奉仕セックスって……なんだよソレ」
「だって俺何っっにもしなくて良かったし」
「ワリーけど、気分じゃねんだよね」
「ダメよケイちゃん。慎チンもうジジイだから」
二人の会話を聞き付けて、マスターが割って入った。
「ヘー。枯れちゃった? ED?」
「うるっせぇよ。そんな話ならケイタさんもう向こう行ってよ」
野次馬的視線を向けるケイタを、手をヒラヒラさせて追い払う。ちぇ、なんだよー、と子供っぽい捨て台詞を残して席を離れるケイタの背を、それでも慎治は笑って見送った。
「慎チン、いつまで操立てしてるつもりなのよ。ケイちゃんだって、付き合えばイイ子なんだから付き合っちゃえばイイのに」
「んー……」
彼氏がいる間はピタリと出歩かなくなる事を思うと、ケイタもああ見えて相手が決まれば誠実なんだろうという事は察しがつく。じゃあなんで別れるんだ、という話はこの際置いといて。
操立て。そんなつもりはなかったが、この二年半、結局誰とも関わりを持たないまま時が過ぎてしまった。その気さえあれば、マスターにでも言えば誰か慎治に合いそうな男を紹介してももらえただろうし、この店に来てれば今みたいに誰かに声をかけられる事もある。それでも、その気にはならなかった。
歩が何かに困って慎治の助けが必要になった時、いつでも頼ってこれるようにと、携帯の番号も住む部屋も変えなかった。けれども歩からは訪問はおろか、何の連絡さえもなかった。自分から別れを切り出しておきながら、それを密かに期待していた自分の愚かさはよく分かっている。でも、どうしても望みを捨て切れなかった。
――歩。
今日、歩は二十歳になった。俺はもう、忘れられてしまったのかもしれない。
「そろそろマジで引越し考えねぇとな……」
グラスを空けて、溜め息混じりに呟いた。
「なに? どしたの?」
「なんでもねーよ。お勘定」
興味半分心配半分で声を掛けるマスターに首を竦め、慎治はポケットから出した一万円札をカウンターに置いた。
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1から読む
歩×慎治(高校生×リーマン)につきましてはコチラ↓R18です。
メイン →『雨がやんだら』
番外 →『十二月二四日、夜八時』
会話のみ →『今日のピロートーク』
『クリスマスイブの過ごし方』
『ただそれだけの朝』
『ささやかな望み』
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相変わらずのビッチな軽さで慎治を誘うその口調に、慎治は苦笑した。
「ご奉仕セックスって……なんだよソレ」
「だって俺何っっにもしなくて良かったし」
「ワリーけど、気分じゃねんだよね」
「ダメよケイちゃん。慎チンもうジジイだから」
二人の会話を聞き付けて、マスターが割って入った。
「ヘー。枯れちゃった? ED?」
「うるっせぇよ。そんな話ならケイタさんもう向こう行ってよ」
野次馬的視線を向けるケイタを、手をヒラヒラさせて追い払う。ちぇ、なんだよー、と子供っぽい捨て台詞を残して席を離れるケイタの背を、それでも慎治は笑って見送った。
「慎チン、いつまで操立てしてるつもりなのよ。ケイちゃんだって、付き合えばイイ子なんだから付き合っちゃえばイイのに」
「んー……」
彼氏がいる間はピタリと出歩かなくなる事を思うと、ケイタもああ見えて相手が決まれば誠実なんだろうという事は察しがつく。じゃあなんで別れるんだ、という話はこの際置いといて。
操立て。そんなつもりはなかったが、この二年半、結局誰とも関わりを持たないまま時が過ぎてしまった。その気さえあれば、マスターにでも言えば誰か慎治に合いそうな男を紹介してももらえただろうし、この店に来てれば今みたいに誰かに声をかけられる事もある。それでも、その気にはならなかった。
歩が何かに困って慎治の助けが必要になった時、いつでも頼ってこれるようにと、携帯の番号も住む部屋も変えなかった。けれども歩からは訪問はおろか、何の連絡さえもなかった。自分から別れを切り出しておきながら、それを密かに期待していた自分の愚かさはよく分かっている。でも、どうしても望みを捨て切れなかった。
――歩。
今日、歩は二十歳になった。俺はもう、忘れられてしまったのかもしれない。
「そろそろマジで引越し考えねぇとな……」
グラスを空けて、溜め息混じりに呟いた。
「なに? どしたの?」
「なんでもねーよ。お勘定」
興味半分心配半分で声を掛けるマスターに首を竦め、慎治はポケットから出した一万円札をカウンターに置いた。
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1から読む
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メイン →『雨がやんだら』
番外 →『十二月二四日、夜八時』
会話のみ →『今日のピロートーク』
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コメント
>keyさん!
お心遣いありがとうございマス!!
モー学祭中に少し書き溜めた分があったので
今まで毎夜更新しておりましたw
そろそろストック切れになりそうなので
がんがって書いていきたいと思います!!!
ハピーエンドに向けて突っ走れ二人!!!!!
と私!!!!!(汗)
いつもありがとうございマスッ!!!
お心遣いありがとうございマス!!
モー学祭中に少し書き溜めた分があったので
今まで毎夜更新しておりましたw
そろそろストック切れになりそうなので
がんがって書いていきたいと思います!!!
ハピーエンドに向けて突っ走れ二人!!!!!
と私!!!!!(汗)
いつもありがとうございマスッ!!!
優しすぎてすれ違ってしまった二人…
ずっとハラハラしてましたっ(涙)
やっと幸せになれそうで嬉しいです~♪
ずっとハラハラしてましたっ(涙)
やっと幸せになれそうで嬉しいです~♪
2008/05/24(土) 14:28 | URL | 蛍 #-[ 編集]
>蛍さんv
兄があんな事しなければ
順風満帆にシアワセだったんじゃないかと
思ったりもしますがwwwwwwww
いよいよラストスパートす!
二年半のブランクをうまく表現できるか(私が)
ドキムネしてますが
がんがってシアワセにしたいと思いますっ!!!
いつもありがとうございますっ!
兄があんな事しなければ
順風満帆にシアワセだったんじゃないかと
思ったりもしますがwwwwwwww
いよいよラストスパートす!
二年半のブランクをうまく表現できるか(私が)
ドキムネしてますが
がんがってシアワセにしたいと思いますっ!!!
いつもありがとうございますっ!
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