雨は幸福の色に染まり

「慎治さん、こんな所で寝てたら風邪ひくよ」
「ん……寝るつもりなかったんだけどな」

　歩の帰りを待ちながらソファに寝転がって、本を読んでいた。いつの間にか眠っていた俺の手の中で、読んでいた本は表紙のカバーだけになっていた。歩が床に落ちた中身を拾って、俺の手から取ったカバーを掛けてテーブルの上に置いた。

「歩メシは？」
「上がりん時に所長が休憩だったから中華ご馳走んなった」

　伸びをしながらそか、と返す。

「……これ」

　歩がテーブルに置かれた包みを取って、中身を問うように俺を見る。

「例のネクタイ。お前の分」

　意味深な笑みを浮かべて開けろよ、と歩を促した。

　ウチの百貨店オリジナルで出した期間限定ネクタイ。その季節の自然をモチーフに、新鋭デザイナー数人が手掛けた。その中で一際人気だったのが、あるＣＧデザイナーのものだった。

　彼の桜色のネクタイを見て、歩は俺に似合いそうだと言った。俺は、入荷予定のサンプル画像を見て、紫陽花色のものが歩に似合うと思った。

　六月が近付き入荷されて驚いたのは、紫陽花柄は一柄でなく、彼のデザインのものがもう一柄あった事だ。好評だったからデザインを追加したそうだが、その二本のネクタイは、寄り添うように、重なるように、護りあうように。並べると空気が溶け合った。

「……ふたつ？」

　包みを開けた歩が、包みから出てきた二本のネクタイを手に俺の意図を問うように俺を見た。

「二本ともお前にやるよ」
「二本とも？」
「ん、二本とも。お前の好きに使えよ」
「じゃあ」

　俺の意図を察したのか、歩が一本を俺の胸元に宛てた。

「こっちは慎治さんのだ」

　似合うね、と笑って、歩は俺に、そっとキスを落とした。



おわり


エロはみなさまの脳内補完でよろすくおながいしますwwwwwworz




後日談？
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「歩、ネクタイを贈る意味って知ってるか？」

「？　知らない」

「『あなたに首ったけ』ってんだよ。まぁ若干古臭いコピーって気がすっけど」

「首ったけ？」

「分かんねぇ？」

「うん」

「……やっぱりか（笑）俺でも古い気ぃするもんな」

「なんかでもイメージ分かる」

「そか？」

「犬の首輪みたいな感じかな」

「いや、違うんじゃねぇ？」

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