山井との約束は午後六時。その五分前に駅前に行くと、山井はもう人待ち顔で約束の場所に立っていた。初めて見た私服姿の山井はいつもの作業着のツナギ姿と違いジャケットにデニムのシンプルな服装で小綺麗に纏め、断然そのルックスを引き立てていた。集荷で来ている時は眠気もあって注視していなかったからか、改めてよく見れば陽に焼けた滑らかな肌に日々の荷物の運搬でついたと思しき筋肉の逞しい上半身を持ち合わせていた。彼に気付いた道行く人々が二度目の視線を投げ掛ける程度にその風貌は人目を引いていた。
※性描写若干アリです。18禁でおながいします。
今朝もいつものように落とされたキスでぼんやりと目が覚めた。享一の服装がスーツでない事で今日が金曜と気付く。金曜はカジュアルフライデーだとかでスーツ以外の着衣推奨だそうで、享一も取引先に特別な用がない限りノータイにデニム以外のパンツといった軽めの服装で出社する。泰司は享一のスーツ姿が好きだった。つまらない事だが金曜になるといつも享一の会社に対して苦々しい気持ちを抱かずにはいられない。
今朝もいつものように落とされたキスでぼんやりと目が覚めた。享一の服装がスーツでない事で今日が金曜と気付く。金曜はカジュアルフライデーだとかでスーツ以外の着衣推奨だそうで、享一も取引先に特別な用がない限りノータイにデニム以外のパンツといった軽めの服装で出社する。泰司は享一のスーツ姿が好きだった。つまらない事だが金曜になるといつも享一の会社に対して苦々しい気持ちを抱かずにはいられない。
次目が覚めたのは、朝だった。ベッドの中にない恋人の姿を探して部屋を見渡すと、享一はスーツに着替えネクタイを締めている所だった。毎日のように結び続けてそろそろ五年になるその慣れた手さばきに思わず見入ってしまう。ネクタイを結び終え、泰司の視線に気付いた享一がふと笑みを浮かべて泰司にキスを落とした。
※性描写アリ。18禁でおながいします。
優しくベッドが揺れる。ぼんやりとした意識の中、唇を塞がれてゆっくりと目を開けた。
「ん……享一……?」
「ただいま」
恋人の冷えた身体が泰司の温もりを求めるように身を寄せてくる。
「おかえり……今帰ったとこ? 今……何時?」
「そ。今二時。お前何時から寝てんの?」
背後から抱き締められ、まだ冷たいままの掌が泰司のシャツの中に滑り込んできた。
優しくベッドが揺れる。ぼんやりとした意識の中、唇を塞がれてゆっくりと目を開けた。
「ん……享一……?」
「ただいま」
恋人の冷えた身体が泰司の温もりを求めるように身を寄せてくる。
「おかえり……今帰ったとこ? 今……何時?」
「そ。今二時。お前何時から寝てんの?」
背後から抱き締められ、まだ冷たいままの掌が泰司のシャツの中に滑り込んできた。
「じゃぁ確かに。明日十時までに先方にお届けします」
宅配業者の青年が帽子の鍔を摘んで軽く挨拶する。彼は泰司の住む地区担当らしく、泰司が集荷を頼むといつもこの青年がやって来る。名前は山井といった。
宅配業者の青年が帽子の鍔を摘んで軽く挨拶する。彼は泰司の住む地区担当らしく、泰司が集荷を頼むといつもこの青年がやって来る。名前は山井といった。
SIDE2:泰司
「ねぇねぇ入沢、高見君て彼女いるの?」
一般教養で一番単位を取りやすいと言われる芸術学の授業中。広い講堂のため私語でザワつくのを良い事に泰司の隣に座った同じ学科の村上が話かけてきた。
「ねぇねぇ入沢、高見君て彼女いるの?」
一般教養で一番単位を取りやすいと言われる芸術学の授業中。広い講堂のため私語でザワつくのを良い事に泰司の隣に座った同じ学科の村上が話かけてきた。
※性描写アリです。18禁でお願いします。
「享一……も……ズボンキツい……」
泰司が訴えるような目で享一を見る。享一は泰司の髪をくしゃ、と撫でてキスをした。キスを貪りながら、腰を揺らす泰司から下半身に纏った物を下着ごと脱がせてやる。
「享一……も……ズボンキツい……」
泰司が訴えるような目で享一を見る。享一は泰司の髪をくしゃ、と撫でてキスをした。キスを貪りながら、腰を揺らす泰司から下半身に纏った物を下着ごと脱がせてやる。
※性描写若干アリ。18禁でお願いします。
SIDE1:享一
「でさぁ、あの教授酷ぇんだよね、教科書忘れただけでさ、『教科書を持たずに授業に出るのは侍が刀を持たずに戦に出るのと一緒だ。刀に切られてこい』だって。酷ぇだろ?」
泰司が缶ビール片手にその教授の真似をしているのかしかめっ面を作って、けれども酷く楽しそうに今日あった出来事を話す。
SIDE1:享一
「でさぁ、あの教授酷ぇんだよね、教科書忘れただけでさ、『教科書を持たずに授業に出るのは侍が刀を持たずに戦に出るのと一緒だ。刀に切られてこい』だって。酷ぇだろ?」
泰司が缶ビール片手にその教授の真似をしているのかしかめっ面を作って、けれども酷く楽しそうに今日あった出来事を話す。
「享一、前よりヒゲ濃くなってねぇ?」
「……かもな」
享一は、自分の顎を一撫でしてから、その顎を泰司の頬に擦り付けた。
「いったいって! そんなオヤジ臭いことやめろって!」
「……だれがオヤジだよ」
享一が小さく眉をひそめてぴた、と動きを止める。むすっと不機嫌そうに泰司から身体を離した。
「……かもな」
享一は、自分の顎を一撫でしてから、その顎を泰司の頬に擦り付けた。
「いったいって! そんなオヤジ臭いことやめろって!」
「……だれがオヤジだよ」
享一が小さく眉をひそめてぴた、と動きを止める。むすっと不機嫌そうに泰司から身体を離した。
「起きろ」
脳髄に響く声が覚醒を促す。けれども睡魔がそれを阻もうと抵抗してくる。
「……ん、いやだ……」
身体を揺すられ、泰司の脳の一部が無理矢理起こされる。でもまだ目を開ける指令を出す部分は眠っているらしい。瞼が重くて動かない。
脳髄に響く声が覚醒を促す。けれども睡魔がそれを阻もうと抵抗してくる。
「……ん、いやだ……」
身体を揺すられ、泰司の脳の一部が無理矢理起こされる。でもまだ目を開ける指令を出す部分は眠っているらしい。瞼が重くて動かない。