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主よ、人の望みの喜びよ(22)

BL好きが書いた自作小説を短編・シリーズでぼちぼちアップしています。年下攻率高し。 18禁。
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 歩が来なくなってから一度も配置変えをしていない部屋。慎治は歩をソファに座らせた。コーヒーを入れてマグを手渡す。そこにはかつてより一回り大きくなった歩がいた。スーツから部屋着に着替え、慎治が床に腰を下ろすと、それでも三年前と変わらない時が戻ったような気がした。

「慎治さん俺今日、ハタチになった」
「ん……そだな。おめでと、歩」

 少しの沈黙の後、歩がゆっくりと話し始めた。手元のマグから慎治に歩の視線が移る。慎治を見る歩の目は聞いて欲しい、と訴えているようだった。



「大学はK大だよ。慎治さんの後輩になれた」
「そう、なのか……」

 ――M大以外の受験って、そういう事だったのか。

 慎治の胸の奥で、感情の波が静かにうねりだす。

「授業料はバイトして、自分で払ってる。二年終わるまでに院までの分、貯まる予定」
「歩お前……」

 おそらく歩の家庭環境なら、そんな必要はなかったはずだ。別れ際の慎治の言葉が、大人になろうとした歩にそれを課してしまったんだろうか。激しい後悔が慎治を襲う。

「ハタチまでに大人になって、ハタチになったら慎治さんに会いに行こうと思ってた。でも何も変わんねんだね。ハタチって、もっと大人なんだと思ってた」
「……歩」

 歩は気付いてないのだろうか。その表情は、紛れもなく大人のそれだという事に。

 長く辛い恋のあとの恋愛まで、しなくて良い辛い思いをさせてしまった。その時歩はたったの十七だった。雨が降る度、歩を思い出す度、慎治を苛んでいたものは、罪悪感。歩を守るために、歩に傷を負わせた事。

「慎治さん、俺兄貴に話してきたよ」
「……何を」
「全部。兄貴が好きだった事も、慎治さんの所に行くって事も」
「――それで、なんて」
「何も。黙って慎治さんの所に行かせてくれた」

 慎治が歩の兄に託した、唯一の願い。野田は、覚えていたのだろうか。歩は、兄に否定されずに済んだのだろうか。だとしたら。

 ――良かった。

 うねりに熱が帯びて、身体を熱く満たしてゆく。




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コメント
携帯も居住も内装も変えてない慎たんがケナゲすぎる(ToT)
慎たんの『良かった』が自己本位な安堵じゃなくて、歩の心配をずっとしてた!!って所が上手く伝わるといいというか歩まぢ気付いとけよというか
エチ(・ω・;)(;・ω・)楽しみです!!(・ω・;)(;・ω・)(スミマセン…)
2008/05/26(月) 09:19 | URL | いの #94L/QBIE[ 編集]
10コ下の恋人にすっかり慣らされてw
>いのさんv

もう歩じゃないとイけないカラダになってしまったみたいすw
バリタチだった慎チンもいまや
歩以外には枯れのウケリバになってしまいまんたww
歩はどこまで気付くのかw
兄と慎チンが接触あった事も知らないままな事ですしw
なんだかんだで結局兄と慎チンの愛に守られてマスwwwwww
エチー!
今書き始めましたが大☆苦☆戦(;´Д`)
更新遅れる可能性大ですが
よろしければお付き合いくださいーヒラニーm(_ _)m
2008/05/26(月) 22:46 | URL | ベラ #mQop/nM.[ 編集]
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